ドイツのパティシエ事情④|料理人(Koch)の修行とキッチンシステムのリアル

ドイツのパティシエ事情④「Kochausbildung」 ドイツのパティシエ事情
ドイツのパティシエ事情④「Kochausbildung」
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これまでの記事では、お菓子職人(コンディトア)の仕組みやその卒業試験について詳しくお話ししてきました。

「ドイツで料理人(コック)を目指すには、どんなステップを踏むんだろう?」
「現地のホテルの厨房やレストランのキッチンって、実際はどんな風に分業されているの?」

実はドイツでお菓子職人としての修行を終えたあと、そのまま料理人としての勉強を始めました。

お菓子と料理、どちらの現場も内側から泥臭く経験してきたからこそ見えてきた、ドイツの料理人修行「Koch Ausbildung(コッホ・アウスビルドゥング)」の仕組みやキッチンのリアルな舞台裏、そして失敗しない職場選びのヒントを、今回も丁寧にお話ししていきます。

ドイツのパティシエ事情のバックナンバーはこちらです!
▶ [ドイツのパティシエ事情シリーズ一覧はこちら]

この記事では、

  • 料理人になるためのアウスビルドゥングの仕組みと期間短縮のリアル
  • レストランやホテルと、病院や学校の食堂での働き方の違い
  • フランス式がベース!ドイツの厨房を支える「4つのポスト」の分業システム

についてわかります。ぜひ最後まで読んでみてくださいね!

【辞書には載っていない?菓子職人専門用語100選】

ドイツで働き始めるとき、最初に大きな壁になると感じるのが、やはり「言葉」です。

特に、語学学校でも習わず、辞書にも載っていない専門用語に戸惑う場面が多いのではないでしょうか。

そこで、これまで現地でドイツ人の同僚たちと働く中で覚えてきた、「本当に毎日使うリアルなドイツ語」を100個まとめました。

これからドイツの現場に飛び込む方や、言葉のやり取りで心が折れそうになっている方の、小さな支えになれたら嬉しいです。

働きながら料理人を目指す「コッホ・アウスビルドゥング」

お菓子職人の時と同じく、ドイツでプロの料理人(Koch:コッホ)としてオフィシャルに認められるためにも、働きながら学校に通う「アウスビルドゥング(職業訓練)」を利用するのが一般的です。

基本の修行期間は3年間。最後に国家試験に合格することで、プロとしてのスタートを切ることができます。

ちなみに、すでにコンディトアやパン屋など、料理人の業務に関連した修行を修了している場合は、通常3年の修行期間を2年間に短縮することができます。

とはいえ、実際に現地のいくつかの店舗で面接を受けた際は、そのほとんどで「3年契約」を提示されることが多いです。

料理の世界もやはり職人の技術職なので、お店側としては「じっくり3年かけて仕込みたい」という想いが強く、期間の短縮はあまり好まれない傾向にあるのかなと思います。

勤務とお勉強のサイクル

アウスビルドゥングがスタートするのは、一般的に新学期が始まる8月(冬スタートの場合は1月か2月)です。

学校に通う頻度やスケジュールは州によってかなり違いがあります。

私のときは「2ヶ月間は毎日職場で働き、次の1ヶ月間は毎日学校へ通う」という完全なブロック制(Blockunterricht)でした。同期の中には「3週間働いて1週間学校へ行く」というローテーションの地域もあり、地区によって様々です。

なお、学校で習う一般教養や衛生学、栄養学などの基本的な内容は、お菓子職人の学校と重なる部分も多いため、ここでは省略しますね。

▶ [ドイツの修行学校の雰囲気や授業内容について詳しく書いた第2弾の記事はこちら]

技術を磨くか、生活を整えるか。大切な職場選びの視点

料理人のアウスビルドゥングを始めるためには、まず自分が働く職場(お店)を見つけなければなりませんが、料理人の場合はお菓子職人に比べて選択肢が幅広いのが特徴です。

一般的なレストランやホテルのほか、ケータリング会社、さらには病院、老人ホーム、学校の食堂などでも、指導資格を持った人(マイスターなど)がいれば、どこでも修行をすることが可能です。

どこを職場に選ぶかで、学べる中身はガラリと変わる

正直にお話しすると、試験に合格して資格を取るだけであれば、どの職場を選んでも可能です。

しかし、「料理人としての確かな技術や深い経験を学びたい」と考えているのであれば、やはり手作りにこだわるレストランやホテルを選ぶのが圧倒的にオススメです。

ただ、レストランやホテルの現場はピンキリなのも事実。そこで後悔しないためにも、契約を結ぶ前に数日間、「Praktikum(プラクティクム=職業体験・見学)」をさせてもらうことを強くおすすめします。

この期間は無給にはなりますが、外からは見えない厨房のリアルな日常や、先輩たちの本当の働き方を自分の目で確認できるため、後々のことを考えても損はありません。

職場ごとのメリットとデメリット

  • ホテル・レストラン
    • 一皿にかける情熱や繊細な技術、流行の料理を最前線で学べるやりがいがあります。一方で、拘束時間が長く、肉体的にもハードな日々になりやすいという側面もあります。
  • 病院・老人ホーム・学校の食堂
    • 勤務時間が規則正しくきっちりと定められているため、ワーク・ライフ・バランスを保ちやすいという、非常に大きな利点があります。

ちなみに、アウスビルドゥングの期間中であっても、同じように職業訓練を受け入れているお店であれば、途中で職場を「転職」することは可能です。同じ地区内での転職であれば、通う学校も変えることなく、そのまま修行を続けることができますよ。

フランス式がベース!ドイツのキッチンシステムと分業のリアル

職場の厨房に入ると、そこにはお菓子作りとはまた違ったダイナミックな世界が広がっています。

ドイツのキッチンは、伝統的なフランスの厨房システム(部門シェフ制度)を取り入れているところが多いため、現場ではフランス語由来の専門用語が毎日飛び交います。

キッチンの規模によってさらに細かく分かれることもありますが、基本となる「4つのポスト(部門)」を簡単にご紹介しますね。

  • Gardemanger(ガルド・マンジェ)
    • 主に「冷たい前菜」を担当するポストです。華やかなサラダの組み立てや、テリーヌ、冷製オードブルなどを仕込みます。
  • Entremetier(アントルメティエ)
    • 「温かい前菜」や、メイン料理に添える「付け合わせ」を担当するポストです。スープはもちろん、多岐にわたる野菜の調理、パスタやお米料理などもここが引き受けます。
  • Saucier(ソーシエ)
    • メインとなる「肉や魚の調理」、そして味の決め手となる「ソース作り」を担当する、厨房の要となるポストです。一番重要なセクションのため、料理長(シェフ)自らが担当することも多いイメージです。
  • Patissier(パティシエ)
    • コースの最後を飾る「デザート」や、お食事と一緒に提供する「パン」を担当するポストです。規模によっては、ガルド・マンジェと業務が近いため統合されている場所もあります。

▶ [レストランのパティシエの仕事内容について詳しく書いた第1弾の記事はこちら]

私の場合は、最初の4ヶ月ほどはホテルの朝食ビュッフェの担当からスタートし、その後ガルド・マンジェを6ヶ月、ソーシエを1年ほど経験し、残りの期間をパティシエのポストで過ごしました。

残念ながらアントルメティエとして働く機会にはほとんど恵まれませんでしたが、これは自分で選べるわけではなく、料理長が全体のバランスを見て振り分けるものなので、「これもひとつの縁だな」と思うことにしました。

個人的には、盛り付けや細かな細工にこだわりを詰め込める、パティシエとガルド・マンジェの仕事が特に作り甲斐があって楽しかったです!

ドイツで調理師免許(資格)を取得する大きな利点

お菓子職人の時と同様に、ドイツで料理人を目指すことには、とても現実的で魅力的なメリットがあります。

  • 世界中で需要があり、とにかく「職に困りにくい」
    • お菓子職人の求人に比べて、ドイツ国内における「料理人(Koch)」の求人需要は圧倒的に多いです。一度しっかりとした技術とドイツの国家資格を身につけてしまえば、EU域内でも評価されやすい資格として、ヨーロッパ全土はもちろん、世界中でも仕事を見つけやすい、一生モノの強い武器になります。
  • 初期コストを抑え、少しの給料をもらいながら学べる
    • 日本の調理師専門学校のような高い学費を払う必要がなく、現場での実践経験を積みながらプロを目指せます。
      ちなみに、料理人のアウスビルドゥング中の手当(給料)は、実はお菓子職人(コンディトア)の手当よりも少しだけ高めに設定されていることが多い傾向にあります(※それでも一人暮らしで完全に自立できるほど多くはありませんが、日々の暮らしの優しい支えになります)。

まとめ:人生の引き出しを増やしてくれた大切な時間

調理師という仕事は、世界のどこに行っても必要とされる、やりがいのある職業です。一方で、労働時間とお給料のバランスが比例しづらく、大変な面があるのも事実です。

当時は、5つ星ホテルの厨房で揉まれ、時にはミシュラン2つ星のレストランの現場で働かせていただいたりと、様々な世界を見ることができました。当時は肉体的にも精神的にもかなりハードで、必死な日々でしたが、個人的には技術面でも、人としても成長できた大切な時間だったと思っています。

「いつかドイツのキッチンに立って、本場の料理を学びたい」

そんな熱い想いを胸に秘めている方の歩みに、このリアルな体験談が、一歩を踏み出すための小さなヒントになれたら嬉しいです。

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