前回の記事では、現地でのお菓子職人の呼び名である「コンディトア」と「パティシエ」の違いについてお話ししました。
「ドイツでお菓子職人を目指してみたいけれど、どうやってプロになるの?」
「現地ならではの修行制度(アウスビルドゥング)って、実際はどんな生活なんだろう?」
日本では専門学校に通って技術を学び、現場へ入るのが一般的ですが、ドイツには「Ausbildung(アウスビルドゥング)」という、働きながら学校に通う独自の国家的な職業訓練制度があります。
今回は、その具体的な仕組みや学校生活のリアル、そして今だからこそ言える「失敗しない職場選びのポイント」まで、当時の実体験を交えながらお話ししていきます。
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この記事では、
- ドイツの修行制度「アウスビルドゥング」の基本の仕組みと期間短縮のコツ
- 学校と現場での日々のルーティン
- 経済的なリアル(お給料)と、技術をしっかり身につけるための職場選び
についてすっきりと理解できるようになります。ぜひ最後まで読んでみてくださいね!
【辞書には載っていない?菓子職人専門用語100選】
ドイツで働き始めるとき、最初に大きな壁になると感じるのが、やはり「言葉」です。
特に、語学学校でも習わず、辞書にも載っていない専門用語に戸惑う場面が多いのではないでしょうか。
そこで、これまで現地でドイツ人の同僚たちと働く中で覚えてきた、「本当に毎日使うリアルなドイツ語」を100個まとめました。
これからドイツの現場に飛び込む方や、言葉のやり取りで心が折れそうになっている方の、小さな支えになれたら嬉しいです。
※本ページはプロモーションが含まれています。
働きながらプロを目指す「アウスビルドゥング」の仕組み
日本では専門学校へ通ってお金を払いながら技術を学ぶことが多いですが、ドイツではこの「アウスビルドゥング(職業訓練)」を修了し、試験に合格することで、初めて公的に一人前として認められます。
菓子職人(コンディトア)になるための修行期間は、基本的には「3年間」です。
ただ、この期間は状況に応じて短縮することもできます。
- 2年間に短縮できる場合:
- ドイツの高等学校卒業資格(Abitur)を持っている場合や、すでに調理師(Koch)やパン職人(Bäcker)など、関連する他の修行を修了している場合
- 2年半に短縮できる場合:
- 職場での仕事ぶりや、通っている学校での成績が極めて優秀な場合
ただし、職場によっては「できるだけ長く戦力として働いてほしい」という理由から、期間の短縮をあまり好まないところもあります。短縮幅は職種・州・商工会議所(HWK)の判断で変動する可能性もあります。

修行をスタートする前の契約段階で、短縮の可能性についてしっかりと意思表示をしておくのが、大切なポイントですね。

学校での勉強とお仕事のバランス
アウスビルドゥングの最大の特徴は、
「学校( Berufsschule)」と「職場(Betrieb)」を常に行き来する点にあります。
このローテーションの組み方は州や職場によって異なりますが、私の場合は以下のようなスケジュールでした。
- 1年目:週に2回は学校、週に3回は職場で勤務
- 2〜3年目:週に1回だけ学校、残りの日はすべて現場で勤務
地域によっては「1ヶ月間は学校で勉強し、次の3ヶ月間は毎日現場で働く」というブロック制(Blockunterricht)をとっているところもあります。

学校ではどんなことを勉強するの?
学校では、お菓子作りの調理実習はもちろん、食品衛生学や栄養学といった専門知識を学びます。
それと同時に、一般教養の科目(ドイツ語、数学、英語、経済、宗教、さらには体育まで!)の授業もあるんですよ。
当然ですが、授業はすべてドイツ語で行われます。
内容自体は落ち着いて勉強すれば好成績を取れるレベルですが、現場や授業で飛び交う独特の言葉に慣れるまでは、少しだけ辛抱が必要かもしれません。
▶ [パティシエとコンディトアの決定的な違いについての記事はこちら]
現場での仕事と経済的なリアル
職場では、先輩や教育担当のマイスター(職人を育てる資格を持つ人)に教わりながら、実際の営業に使うお菓子を仕込んでいきます。
アウスビルドゥングには「習得すべき技術のガイドライン」が国で定められているのですが、現実的にはすべてを一つの職場で網羅するのは難しいことが多いです。そのため、足りない技術は学校の授業や外部の共同訓練などを通して補うことになります。
また、訓練生は毎週「何を行い、何を学んだか」を記録する活動ノート(Berichtsheft)を書いてマイスターに提出しなければなりません。

この活動ノート(Berichtsheft)の提出は、最終試験を受けるための必須条件なので、どんなに疲れていてもコツコツ書き溜める必要があります。
修行中のお給料はどれくらい?
アウスビルドゥング中は、毎月「給料」が支払われます。
ただ、残念ながらこれだけで自立して生活をまかなうのは、少し厳しい金額です。
目安としての平均(月給)は以下の通りです。
- 1年目:724〜1,070ユーロ
- 2年目:854〜1,140ユーロ
- 3年目:977〜1,280ユーロ
※ここからさらに税金や健康保険などが引かれます。金額は州によっても大きく異なります。

昔、自分がアウスビルドゥングをやっていた時よりもだいぶ増えましたが、これでもたいていの場合は、一人で生きていくには足りないことが多いです。実際、手元に残るお金はとても少ないですしね…州やお店によって給料に違いがあるのも特徴です。
体力勝負!勤務時間のリアル
働く時間は、職場の種類によって全く異なります。
- パン屋さん(統合型):
- 夜勤が中心になります。自分も昔は夜の22時から朝の6時まで働いていました。同期には「毎朝3時スタート」という子もいました。体力的にとてもハードですが、夜勤手当(Nachtzuschlag)が出るため、お財布が少し潤うという嬉しい一面もあります。
- カフェ・ホテル・パティスリー:
- 朝の5時や6時スタートが一般的です。ホテルの場合は、午後から夜にかけてのシフトになることもあります。
お菓子やパン業界は、日曜日や祝日の勤務が認められているため、お休みは不定期になることがほとんどです。週に6日勤務というハードな現場も少なくありません。
後悔しないために!職場選びで絶対に妥協してはいけないこと

ドイツでアウスビルドゥングを始めるためには、自分で働きたいお店を見つけて履歴書(Bewerbung)を送り、面接や数日間の体験研修(Praktikum)を経て採用を勝ち取る必要があります。新学期が始まる「8月」からスタートするのが一番一般的です。
ここで、当時とても残念に感じ、これから挑戦する方にはぜひ気をつけてほしいと思う「職場選びの注意点」があります。
大手チェーンや安易な職場選びの落とし穴
ドイツには非常に多くのパン屋さんやカフェがありますが、特に大手チェーン店などでは、効率化のためにあらかじめ配合された粉(インスタントミックス)をただ混ぜて焼くだけ、という現場が少なくありません。
そうなると、原材料をゼロから計量し、繊細な温度や固さを見極めて仕込む「本物の職人としての技術や知識」を身につけることが難しくなってしまいます。
残念ながら、ドイツ国内でも昔ながらの手作りにこだわり、毎日繊細な生ケーキやチョコレートをゼロから仕込んでいるようなお店は、それほど多くはありません。
だからこそ、応募する前には必ず自分でそのお店のお菓子を食べてみたり、体験研修(Praktikum)をさせてもらって、「このお店の先輩たちは、本当に手作りで丁寧な仕事をしているか」をご自身の目でしっかりと確かめることが、何よりも大切です。
ドイツでプロ(コンディトア)になる大きなメリット
ハードな修行期間ではありますが、ドイツでこの仕組みを乗り越えることには、メリットもあります。
- 初期コストを圧倒的に低く抑えられる
- 日本で専門学校に通うと高額な学費が必要になりますが、ドイツでは働きながら技術を学び、少ないながらもお給料をもらいながらプロを目指すことができます。必要なのは現地での生活費だけです。
- 取得した資格は「EU共通」で使える
- ドイツの国家資格を無事に取得すれば、それはヨーロッパ全土(EU内)で通用するプロの証明になります。当時の同期たちも、修行を終えたあとにスイス、オーストリア、イギリス、フランスへと渡り、それぞれの場所で職人として活躍の幅を広げていきました。ヨーロッパを舞台に技術を磨き続けたい方にとって、心強いパスポートになります。
まとめ:自分の夢をかなえるために
日本で既に調理師免許や製菓の資格をお持ちで、ある程度の実務経験がある方の場合は、必ずしもこの3年間のアウスビルドゥングを最初からやり直す必要はありません(直接現地で職人として就職することが可能です)。
今回の内容は、あくまで「ゼロから本場ドイツの仕組みの中で、基礎をしっかり叩き込んでプロになりたい」という方のための、ひとつのロードマップです。
お菓子作りやパン作りは、とても体力が必要で、ネガティブな面や苦労することもたくさんあります。ですが同時に、自分の手から生まれた美味しいものが、誰かを笑顔にする、とてもやりがいのある仕事でもあります。
これからドイツの地で、お菓子作りの夢を叶えようとしている方の歩みを、心から応援しています。
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