①番号編、②Weizen(ヴァイツェン)編に続き、今回は③スペルト小麦…ドイツ語でDinkel(ディンケル)のご紹介です。
ドイツでは主食はパン。どのスーパーでも沢山売られています。また街中ではパン屋が日本のコンビニレベルで点在しています。
さらに小麦粉の歴史は古く、奥深い世界であり、種類も数えきれない程たくさんあります。そこでドイツ小麦粉物語と題し、連載することとしました。
今回はスペルト小麦…Dinkelmehl(ディンケルメール)について、詳しくご説明します。Dinkelmehlを使ったパンは、必ずと言っていいほどドイツのパン屋で販売されており、広く普及しています。
<結論:スペルト小麦・Dinkelmehlとは>
主にパンがメイン
小麦粉よりも栄養価が高く、健康志向の方にオススメ
言葉の意味
Dinkel(ディンケル)
スペルト小麦という意味。
mehl(メール)
粉という意味。
Dinkelmehlと繋げて一つの単語になっています。
スペルト小麦自体が初耳だという方も多いかと思います。ではそのDinkelの歴史から振り返っていきます。
歴史
Dinkelとは、小麦粉(Weizen)の古い親戚です。長い長い歴史を持ち、それは紀元前1万年まで遡り、近代18世紀までヨーロッパで普及していました。
Weizenの写真と比較してみるとわかりますが、スペルト小麦はフサフサした猫じゃらしのような、ススキのような、毛が種についていません。硬く、穂が垂れ下がっています。
小麦粉の歴史はWeizenのブログでも長いとご紹介しましたが、こちらの歴史も長いです。今からおよそ1万5千年前に、すでにユーラシア大陸の南西部周辺での栽培が確認されています。そして人々の移住とともに、ヨーロッパ大陸へ共に渡って広まりました。
小麦は沢山の種類がありますが、スペルト小麦(Dinkel)に関しては18世紀まで、人々にとって重要な穀物の一つとして栽培・生産され、普及していました。
しかし歴史のなかで、Weizenを中心としたいわゆる柔らかい白パンが誕生して、こちらも普及していきます。大量生産方法も、DinkelよりもWeizenの方が簡単だったこともあり、残念ながら人気が衰退していきました。
しかし20世紀に入ってから、味の美味しさよりも栄養価を重視する健康志向の広まりもあって、このDinkelを見直す動きが広がっています。
小麦ルネサンスが起こったと言えますね。
特殊性
DinkelはWeizenには無い特殊な一面があります。
Grünkern(グリューンケルン)、意味は“みどりの種”です。
この緑色の時期は、実はまだ未成熟な時期であり、収穫には適しません。しかし17世紀頃、大雨などの災害や不作が原因で、収穫量は減るという事態になりました。当時の人々は、なんとかせっかく育てたDinkelをどうにかできないかと考えました。
そこでこの緑色の種の時期に収穫し、ローストして乾燥させ、蓄えることに成功しました。
使用方法として、料理のスープやサラダに加えたのです。つまり製粉してパンに使用しない方法を発見しました。その食べ方が現在も続いています。
参考元:リンク
栄養素
では、小麦ルネサンスが起こるほどのDinkelの栄養価の高さとは、どのようなものなのでしょうか。詳しく解説していきます。
Weizenと比較して、まずマグネシウムが多いです。マグネシウムは不足すると慢性疲労や疲れやすいなどの症状が出てきます。更にアルコールやカフェインの摂取することで、体内のマグネシウムが排出されてしまう作用があります。それを補うために、マグネシウムを多く含むDinkelは効果的です。また他方でマグネシウムは体内で、骨の構成や、筋肉の細胞に作用を働きかける重要な役割もあります。
次に鉄分で多いです。鉄分不足は貧血になりやすい、集中力の低下、免疫力の低下などが挙げられます。
またケイ素も多く含まれているので、皮膚、髪の毛、爪を強化することにも一役買っています。
ビタミンB、亜鉛、銅なども多いので、Weizenより栄養価が高いと言えます。
同じパンを食べるのであれば、Dinkelmehlを使ったDinkel Brot(スペルト小麦パン)を食べよう!という健康志向が増えてきています。
価格
近所のスーパーでは、1kg1,59€(約200円)で販売されていました。オーガニックブランドのDinkelmehlだと、もう少し高くなりますが、およそ200円前後でドイツでは気軽に購入できます。
Dinkelmehl にも番号がありますが、その違いは番号編でも記載した通り、パンやお菓子のレシピによって使用する番号が異なります。
見た目・味
実際に近所のパン屋でスペルト小麦(Dinkel)を使ったパン、Dinkel Brot(ディンケルブロート)を買ってみました。食パンのドイツDinkelバージョン、というイメージですね。一斤2,50€(約312円)です。
このパンのデザインですが、表面にDinkelと書かれています。これは偶然で、パン屋によって異なります。
切って食べてみました。
色は茶色です。
味は、かすかにナッツのような風味があります。ニオイも同様です。こちらもほのかに香って、いい香りでした。
食感は、意外と柔らかかったです。Weizenほどではありませんが、見た目ほど硬くはありませんでした。
中身にDinkelの種が入っています。これもこのパン屋がデザインしたものなので、全てのDinkel Brotに入っているとは限りません。
バターやジャムより、スープやシチュー、サンドウィッチといったおかずに合いそうなパンだと、個人的に感じました。
まとめ
お菓子作りの観点からみると、Dinkelを使用することはあまりありません。まだまだWeizenが主流です。僕のレシピでも、まだDinkelを使用したお菓子やケーキのレシピはまだありません。
しかしドイツではお伝えしたように最近Dinkelを使ったパンはとても人気があるので、Dinkelはパン作りに使用すると言えます。
紀元前1万年も前から現在までも伝わる小麦のDinkel(スペルト小麦)。
スペルト小麦を使用したパンは日本では一般的なのか、またスペルト小麦を使用してパン作りをすることも浸透しているのか、調べてみました。
クックパッドでスペルト小麦で検索したところ、100件もレシピが無かったです。少ないと言えそうですね…
パン文化も異なるので一概に比較はできませんが、今後も健康志向の高まりに追随し、日本でも安価で栄養価の高い粉が増えてほしいなと思います。
僕たちもDinkelの魅力を改めて再確認できたので、今度はDinkelを使用したパン作りに挑戦し、美味しいレシピを皆さんにご提供します!
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